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グランドセイコー Kodo 仕組みを徹底解説|同軸コンスタントフォース・トゥールビヨンの核心

   

グランドセイコー Kodo 仕組み

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グランドセイコー Kodo(鼓動)は、文字盤の6時位置で二つの複雑機構が異なるリズムを刻む、グランドセイコー初の機械式複雑時計です。

内側ではトゥールビヨンキャリッジが滑らかに回転し、その外側ではコンスタントフォースキャリッジが1秒ごとに動きます。

この光景は、複雑な機械を見せるためだけの演出ではありません。

主ぜんまいから伝わる力の変化を整えるコンスタントフォースと、重力による姿勢差へ対応するトゥールビヨンを、同じ回転軸上で一体化したことがKodoの技術的な核心です。

この記事では、機械式時計の基本的な動力経路から、キャリバー9ST1の仕組み、初代SLGT003と第二作SLGT005の違い、精度検定、実用面まで順を追って解説します。

【この記事でわかること】

  • グランドセイコー Kodoの仕組みと名称の由来
  • コンスタントフォースが力を整える原理
  • トゥールビヨンが姿勢差へ対応する仕組み
  • 二つの機構を同軸上で一体化する利点
  • T0からキャリバー9ST1へ進化した開発経緯
  • SLGT003・SLGT005・SLGT001の位置づけ
  • 約72時間と約50時間という二つの数値の違い

✨グランドセイコー Kodoの仕組みとは

Kodoはブランド初の機械式複雑時計

グランドセイコー Kodoは、2022年3月に発表されたブランド初の機械式複雑時計です。

初代モデルの正式名称は「Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン SLGT003」で、手巻き式ムーブメントのキャリバー9ST1を搭載します。

機械式時計の世界で複雑時計という場合、永久カレンダー、ミニッツリピーター、トゥールビヨンなど、通常の時刻表示を越える高度な機構を備えた時計を指します。

Kodoはトゥールビヨンを搭載しただけでなく、コンスタントフォースとトゥールビヨンを同軸上で一体化した点に独自性があります。

「Kodo」は心臓の鼓動を意味する

Kodoという名称は、日本語の「鼓動」に由来します。

文字盤側から見える内側のトゥールビヨンキャリッジは滑らかに回転し、外側のコンスタントフォースキャリッジは1秒に1回の間隔で動きます。

連続的な回転と規則的なステップ運動が重なる姿は、心臓が一定のリズムで脈打つ様子を思わせます。

名称は視覚的な動きだけでなく、てんぷとコンスタントフォース機構が発する異なる音のリズムにも結び付いています。

キャリバー9ST1の基本仕様

キャリバー9ST1は手巻き式で、約72時間のパワーリザーブを備えます。

一方、コンスタントフォース機構の公称作動時間は約50時間です。

約72時間は時計全体の駆動時間、約50時間は定力機構が作動する時間であり、同じ意味ではありません。

項目 内容
ムーブメント 手巻き式キャリバー9ST1
主要機構 コンスタントフォース、トゥールビヨン
振動数 毎時28,800振動、毎秒8振動
静的精度 平均日差プラス5秒~マイナス3秒
携帯時の精度目安 日差プラス5秒~マイナス1秒
パワーリザーブ 約72時間
定力機構の作動時間 約50時間
石数 44石

💡機械式時計の動力からKodoを理解する

主ぜんまいから針まで力が伝わる流れ

手巻き式の機械時計は、りゅうずを回し、香箱の中にある主ぜんまいへエネルギーを蓄えることで動き始めます。

  1. りゅうずを回して主ぜんまいを巻き上げる
  2. ほどけようとする力が香箱を回す
  3. 輪列が回転速度を変えながら動力を伝える
  4. 脱進機が歯車の動きを小刻みに解放する
  5. てんぷが一定周期で往復運動する
  6. 輪列につながる針が時刻を表示する

機械式時計は、主ぜんまいの力を一気に使うのではなく、脱進機とてんぷによって規則的な周期へ分割しています。

主ぜんまいの力は一定ではない

主ぜんまいは、完全に巻き上げられた状態から停止直前まで、常に同じ力を出し続けるわけではありません。

巻き上げ量が変わると香箱から取り出されるトルクも変化し、その影響が輪列を通じててんぷへ届きます。

てんぷが左右へ振れる角度は「振り角」と呼ばれます。

てんぷへ伝わるエネルギーが変化すると振り角も変わりやすくなり、歩度の安定性へ影響する可能性があります。

時計の向きによって姿勢差が生じる

腕時計は、文字盤を上にした状態、横向き、りゅうずを下にした状態など、使用中にさまざまな姿勢を取ります。

時計の向きが変わると、てんぷやひげぜんまい、軸受けに対する重力や摩擦の現れ方も変わります。

姿勢によって生じる進み遅れの違いが姿勢差であり、トゥールビヨンはこの偏りを時間の中で平均化するための機構です。

⚙️コンスタントフォースの仕組み

力を定力ばねへ一度蓄える

コンスタントフォースは、日本語では定力機構と呼ばれます。

主ぜんまいから届く力を調速機構へ直接送り続けるのではなく、途中にある定力ばねへ短時間分のエネルギーを一度蓄えます。

  • 主ぜんまいは長時間分の動力を蓄える
  • 定力ばねは短時間分の動力を受け取る
  • 定力ばねから調速機構へ力を周期的に渡す

定力ばねを中継地点として使うことで、主ぜんまい側のトルク変化を、そのままてんぷへ伝えにくくします。

外側のキャリッジが1秒ごとに動く

Kodoの外側にあるコンスタントフォースキャリッジは、1秒に1回の間隔で動きます。

この動きは通常の秒針のような連続運動ではなく、1秒ごとに区切られたステップ運動です。

外側キャリッジのアームは秒表示の役割も担います。

1秒ごとの動きは装飾ではなく、定力機構が周期的にエネルギーを受け渡している様子を可視化したものです。

コンスタントフォースは万能な精度保証ではない

てんぷへ届くエネルギーを安定させれば、振り角も一定に保ちやすくなります。

ただし、機械式時計の歩度には、姿勢、温度、磁気、衝撃、潤滑状態なども関係します。

コンスタントフォースの役割は誤差を完全になくすことではなく、精度を変化させる要因の一つであるトルク変動を抑えることです。

🌀トゥールビヨンの仕組み

調速機構をキャリッジごと回転させる

トゥールビヨンでは、てんぷ、ひげぜんまい、アンクル、がんぎ車などを回転するキャリッジの中へ収めます。

時計全体を回すのではなく、精度をつかさどる調速・脱進機構を小さなかごの中で回転させる構造です。

Kodoでは、てんぷが毎秒8振動しながら、内側のトゥールビヨンキャリッジも滑らかに回転します。

トゥールビヨンは重力を消す装置ではない

トゥールビヨンは「重力の影響をなくす機構」と説明される場合があります。

しかし、調速機構を回転させても、時計へ働く重力そのものが消えるわけではありません。

特定方向に偏る進み遅れを、調速機構の向きを連続的に変えることで平均化するのが基本的な考え方です。

腕時計にトゥールビヨンを搭載する意味

トゥールビヨンは、一定の姿勢で携帯される時間が長い懐中時計の姿勢差へ対応するために発展しました。

腕時計は装着中に向きが頻繁に変わるため、現代では精度面だけで価値を測ることはできません。

  • 姿勢差を平均化する計時機構
  • 微細な部品を製造する加工技術
  • 複雑な機構を組み立てる技能
  • 調速機構の動きを眺める鑑賞性

Kodoでは、トゥールビヨンを単独で見せるのではなく、安定した力を供給するコンスタントフォースと組み合わせています。

😲同軸コンスタントフォース・トゥールビヨンの核心

二つのキャリッジが同じ中心軸を共有する

Kodoの6時位置では、内側のトゥールビヨンキャリッジと、外側のコンスタントフォースキャリッジが同じ中心軸を共有します。

グランドセイコーが発表時に世界初と説明した対象は、コンスタントフォースとトゥールビヨン自体ではありません。

世界初とされたのは、二つの複雑機構を同軸上に配置し、一体化して機能させる構造です。

余分な伝達機構を減らせる

二つの機構を離して配置した場合、それらを連動させるための追加の歯車や軸が必要になることがあります。

歯車の接触点が増えれば、摩擦やエネルギー損失の原因も増えます。

同軸一体化により、余分な機構を介さず、コンスタントフォースからトゥールビヨンへ安定したエネルギーを伝えられることがKodoの利点です。

比較項目 機構を離して置く考え方 Kodoの同軸一体構造
配置 複数箇所へ分ける 同じ中心軸へ集約
動力経路 追加の伝達部品が必要になりやすい 短く直接的に構成できる
エネルギー 接触点が増える可能性がある 損失を抑える方向に働く
見え方 機構が分散する 一つの鼓動する機構として見える

「16ビート」は音楽的な表現

キャリバー9ST1のてんぷは、毎秒8振動します。

これにコンスタントフォース機構が1秒に1回生み出す音が加わります。

グランドセイコーは、このリズムを音楽の「16ビート」になぞらえています。

16ビートは音の印象を表す公式表現であり、てんぷが毎秒16振動するという意味ではありません。

📝T0からキャリバー9ST1への進化

T0は2020年発表のコンセプトモデル

Kodoの源流は、2020年9月に発表された「T0 コンスタントフォース・トゥールビヨン」です。

T0は市販された腕時計ではなく、二つの複雑機構を同軸上で一体化できることを示す非売品のコンセプトモデルでした。

T0で機構の成立を示し、その仕組みを腕へ装着できる製品へ発展させたものがキャリバー9ST1です。

340を超えるパーツを全面的に見直した

コンセプトモデルを腕時計へ変えるには、単に部品を小さくするだけでは足りません。

小型化によって、部品の強度、摩擦、加工公差、エネルギー効率、組み立て性も変化するためです。

グランドセイコーは、T0から製品化する過程で340を超えるパーツを全面的に見直したと説明しています。

  • ムーブメントの小型化
  • 精度安定性の向上
  • 動力伝達の効率化
  • 部品の仕上げ
  • 機構が発する音の調整

専用検定は合計34日間

キャリバー9ST1には、専用のグランドセイコー規格検定が設定されています。

検定では、6方向の姿勢と3段階の温度で精度を測定し、合計34日間にわたり試験します。

公式発表では、従来のグランドセイコー規格および業界標準の2倍に当たる48時間の計測を取り入れたと説明されています。

「6姿勢と3温度のすべての組み合わせを各48時間測定する」とまでは公式に明記されていないため、合計34日間という公式値を優先して理解する必要があります。

実測した各ムーブメントの性能値は、時計に付属する特別な証明書へ記載されます。

🌗SLGT003・SLGT005・SLGT001の違い

SLGT003は「宵闇」を表現した初代モデル

2022年発表のSLGT003は、黒を基調とする仕上げで「宵闇」を表現した初代Kodoです。

ケースにはプラチナ950とブリリアントハードチタンが使われています。

ストラップには姫路黒桟革(ひめじくろざんがわ)が採用され、付け替え用のクロコダイルストラップも付属しました。

発売時の希望小売価格は税込4,400万円、販売数量は世界限定20本です。

SLGT005は「薄明」を表現した第二作

2024年発表のSLGT005は、夜明け前に光が差し始める「薄明」をテーマにしています。

銀色を主体とする明るい仕上げを採用し、初代SLGT003の暗い表情と対をなします。

搭載するムーブメントは同じキャリバー9ST1で、ケース寸法、振動数、パワーリザーブ、防水性能などの中核仕様も共通です。

SLGT005は新しい機構へ置き換えた後継機ではなく、同じ仕組みを異なる光と仕上げで表現したモデルです。

SLGT001はオークション用の一点物

SLGT001は、2022年12月のPhillipsオークションへ出品された限定1本の特別モデルです。

基本性能はSLGT003と共通しますが、ケースはブリリアントハードチタンで、ムーブメントやバンドの仕上げにも違いがあります。

SLGT001は通常の世界20本限定シリーズへ含まれるモデルではなく、別枠で製作された一点物です。

モデル 位置づけ 主な特徴 販売数量
SLGT003 初代Kodo 宵闇、暗色仕上げ 世界20本
SLGT005 第二作 薄明、銀色仕上げ 世界20本
SLGT001 オークション用特別モデル チタンケースなど専用仕様 1本

⌚Kodoの実用性と注意点

10気圧防水と規正機構を備える

SLGT003とSLGT005は、日常生活用強化防水10気圧を備えます。

また、りゅうずを引くとトゥールビヨンキャリッジを停止させる規正機構が働き、秒単位で時刻を合わせられます。

Kodoは複雑機構の鑑賞性を重視しながら、防水性と正確な時刻合わせも考慮した腕時計です。

約72時間と約50時間を区別する

数値 意味 注意点
約72時間 時計全体のパワーリザーブ 定力機構の作動時間ではない
約50時間 コンスタントフォース機構の作動時間 時計が50時間で停止する意味ではない

時計は約72時間動作しますが、その全時間帯でコンスタントフォース機構が働くという意味ではありません。

価格・サイズ・整備性を分けて考える

Kodoは技術的に魅力的な時計ですが、すべての人にとって扱いやすい選択肢ではありません。

  • 直径43.8mm、厚さ12.9mmの装着感
  • 手巻きを定期的に行う必要性
  • 特殊な複雑機構を正規窓口で整備する前提
  • 革ストラップを含む保管環境
  • 希少性と将来価格を混同しない姿勢

Kodo固有の平均修理期間や将来の整備費用は公表されていません。

根拠のない金額や期間を推測せず、購入や整備の際はグランドセイコーの正規窓口で個別に確認するのが適切です。

🏆グランドセイコー Kodoの仕組みが示す価値

2022年GPHGクロノメトリー賞を受賞

初代SLGT003は、2022年のジュネーブ時計グランプリでクロノメトリー賞を受賞しました。

受賞は、Kodoが鑑賞性だけでなく、精度を重視する複雑時計として国際的に評価されたことを示します。

ただし、ジュネーブ時計グランプリは時計業界の国際的な賞であり、公的な計量機関による精度認証とは異なります。

受賞記録は、ジュネーブ時計グランプリ公式の2022年受賞一覧で確認できます。

絶対精度だけでは測れない価値

時刻の正確さだけを比べれば、クオーツ、電波時計、GPS時計には極めて高精度な製品があります。

Kodoは電子制御を使わず、主ぜんまい、歯車、ばね、脱進機、回転体によって、トルク変動と姿勢差へ取り組む時計です。

Kodoの価値は単純な日差の小ささだけではなく、機械式時計の弱点へ機械だけで回答しようとする設計思想にあります。

Kodoの動力を一連の流れで振り返る

  1. りゅうずを回して主ぜんまいへエネルギーを蓄える
  2. 香箱と輪列が力をコンスタントフォース機構へ伝える
  3. 定力ばねが短時間分の力を一度受け取る
  4. 定力ばねが整えた力をトゥールビヨンへ渡す
  5. 外側キャリッジが1秒ごとに動く
  6. 内側キャリッジが調速機構を回転させる
  7. てんぷが毎秒8振動して時を刻む

「力を整える外側」と「姿勢差へ対応する内側」が同じ軸で連携することが、グランドセイコー Kodoの仕組みを一言で表す答えです。

【まとめ】

  • Kodoはグランドセイコー初の機械式複雑時計
  • コンスタントフォースは主ぜんまいのトルク変動を整える
  • トゥールビヨンは方向ごとの姿勢差を平均化する
  • 両機構の同軸一体化がKodoの技術的核心
  • パワーリザーブは約72時間、定力機構の作動は約50時間
  • キャリバー9ST1は6姿勢・3温度で合計34日間検査される
  • GPHG受賞と公的精度認証は区別する必要がある

内側のトゥールビヨンが滑らかに回り、外側のコンスタントフォースが1秒ごとに脈打つ姿には、それぞれ明確な技術的理由があります。

仕組みを理解してからKodoを見ると、目の前で動いているものが単なる装飾ではなく、力を整え、姿勢差へ対応し、時間を作り出す機械そのものであることが見えてきます。


引用・参照元

 

 - グッズ , , , , , , , , ,